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急増する梅毒

決して恥じることはありません
梅毒は病院に行けばちゃんと治ります
抗生物質を飲まないと絶対に治りません 恐ろしい病気です
周囲の人のためにも、生まれてくる子のためにも



1494年スペインはバロセロナで突如として登場した梅毒の流行は、瞬く間にヨーロッパ全土、さらにはアジアへと燎原の火のように広がった。日本とても例外ではない。16世紀に入り 琉球、長崎からわずか1年で東北まで流行が駆け上がったという。梅毒は激しく全身の諸臓器を侵すことから、人々の恐怖の対象ではあったが、梅毒は非道徳な行いの結果とされ、科学的研究などタブー視されてきた。しかし、今から約100年前の1912年、すでに国民病にまでになっていた梅毒に対し、ベルリンの医師アフレート・ブラッシュが警告する 。「我々の社会は汚染されている。撲滅しないと大変なことになる」と・・・



Q. そして日本、戦後ペニシリンの使用によりほとんど無くなっていたのに、近年急速に増えていると聞きましたが・・・

A. 数年前より、東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市及びその周辺都市で、急速に増えています。広島市も例外ではありません。



全国と広島市の2005年以降の梅毒の推移

Q. どのような人がかかっているのでしょうか?

A. 多いのは男性20~50歳代、女性は20歳代の年齢層です。しかし高校生や高齢者の報告も少ないながらあります。近年、ひと昔前まで多かった同性間感染より異性間感染の報告の方が増えています。また女性患者の報告の割合も増えています。これらの傾向について、専門家は「これからもっと感染が広がる可能性がある」と見ています。



東京都:梅毒患者の年齢分布2017年

Q. まずどのような症状がでることが多いですか? 教えてください。

A. 第1期:感染後3週間(10日~3か月)
感染を起こした部位に“しこりや潰瘍”ができます。男性の場合ペニスに、女性の場合は陰唇、膣、場合によっては肛門に出来ます。
これらの“しこりや潰瘍”はふつう一個のことが多く、少し弾力があるのが特徴です。 痛みはありません。同時に、股に痛みのない“グリ”を触れることもあります(リンパ節の腫れ)。これらは1か月ほどで自然に軽快します。しかし、人間の免疫力がアップしたため、菌が皮膚の病巣から逃れて体内に移ったにすぎません。軽快している間に、菌は体内で徐々に増え続けます(潜伏期)。



出来た潰瘍

Q. 次にどのような症状が出ることが多いですか?教えてください。

A. 第2期:感染後数か月
潜伏期の間に、菌が体内に行きわたると、今度は体のあらゆる場所に“ピンク色の発疹:バラ発疹”が出現します。殊に、手のひらや足のうらに頻繁に認められます。これは梅毒に大変特徴的です。 0.5~2cmとやや大きく、かゆみも痛みもありません。 他に、 陰部にいぼ(扁平コンジローマ)が出来たり、口の粘膜に炎症(梅毒性粘膜疹)が起きたり、脱毛が出ることもあります。これらの病変は、治療しなくても数週間以内に軽快します(潜伏期)。一方、菌は体内でさらに組織を腐らせていきます。

補足:第1期と第2期の症状が同時に現れたり、第2期の症状が消えていた(潜伏期)のに、第2期に逆戻りしてその後何度も繰り返したりすることもあります。必ずしも上述のような順番では進行しません。



バラ疹

Q. そして最後はどうなりますか?

A. 晩期顕性梅毒:感染後数年
梅毒が第2期とは異なる新たな病変を呈するようになります。皮膚、筋肉、骨その他さまざまな臓器にゴム腫(ゴムのような腫瘍)が様々な形で出現します。そしてゴム腫は組織を破壊します。鼻の骨は破壊されやすいため、昔より“梅毒になると鼻が落ちる”と言ったものです。
そして、最後は、心臓・血管、脳・神経などあらゆる臓器が腐り、場合によっては死亡することがあります。



Q. 不安な行為をしました。検査すればすぐ結果がでますか?

A. 感染後4週間以上しないと、感染したことを示す抗体は検出できません。



Q. 行くとするなら何科がいいでしょうか?

A. 男性なら泌尿器科へ、女性なら婦人科へ 、手のひらの発疹なら皮膚科がよいと思います。初めより梅毒を心配しているのであれば、泌尿器科で間違いないでしょう。



Q. 検査だけなら、保健所でやってもらえるものでしょうか?

A. 各保健所で受けることができます。
保健所で実施している曜日等が異なるため、まず電話で予約するのが良いでしょう。
HIVやクラミジア、B型肝炎、C型肝炎なども受けられます。



Q. 治療は難しいですか?

A. 外来通院にて、抗生物質の内服で治ります。飲む期間は1~2か月が標準的です。
薬は良く効きます。妊婦にも安全に投与できます。



Q. 梅毒は再発や再感染することはありますか?

A. 治療が不十分であると再発します。また、完全に治癒していても、再び感染することはあります。それは梅毒の場合、再感染を生涯抑えるタイプの抗体はできないからです。 なお再感染する人は要注意です。予防が疎かと言うことでしょう。そのうち、HIVなどをもらう可能性があります。



Q. 治療して治ったのに、検査で陽性反応が続くことがありますか?

A. 陽性反応は生涯続きます。とは言っても、菌がなお体内にいる場合と、すでに治っている場合とがあります。これは、検査で区別できます。



Q. 知らない内にかかり、知らない内に治ることがありますか?

A. “梅毒にかかったこと”に関しては、性行為にて誰かに移されたことは間違いありません。気が付かなかっただけです。“知らないうちに治ったこと”に関しては、おそらく風邪の折などにもらった抗生物質とか日本人の健康や栄養状態の向上が寄与したものと推測されます。



Q. 先天性梅毒について、教えてください。

A. 妊娠中に感染した場合、赤ちゃんへの感染率は約60~80%(100%と書いてある本もあります)考えられます。妊娠早期の2か月までの感染の場合は、胎児は死亡するか、もしくは早産・流産します。妊娠後期に感染し、かつ母体が治療を受けなければ、赤ちゃんに高い頻度で先天性梅毒が発症します。2015年には15名の先天性梅毒の報告がありました。



Q. 先天性梅毒は治りますか?

A. まず妊娠中に十分治療を行うことで、母親と胎児を一緒に治療できるため、先天性梅毒を99%予防できます。 出産後症状が出た場合は、抗生物質で治療します。半分は治癒し、4分の1に後遺症が残り、4分の1が死亡すると報告されています。(2017年7月産婦人科学会)



Q. どうして、100%先天性梅毒の予防ができないのでしょう?

A. 日本では、妊婦健診の最初に梅毒やB型肝炎などは調べますが、それを受けずに出産する場合や妊娠の途中で感染した場合など、感染しているかどうか判定する機会がありません。その場合に母子感染が起こっています。それをどうするかは今後の問題です。



Q. 梅毒にかかると、HIVにもかかることがあると聞きましたが・・・?

A. 梅毒になると、HIV、B型肝炎、淋病、クラミジアなどの他の性病に複合してかかることがあります。梅毒にかかった場合、他の性病も一緒に調べておくのが賢明です。病院や保健所で相談しましょう。



Q. ところで、どうして最近報告数が増えたのでしょうか?

A. ひとつには、「梅毒に対する警戒心が国民にも医療従事側にも薄れていた」と言うものです。“梅毒は昔の病気”と国民も医師もガードが甘くなったのでしょう。二番目には“外国人観光客が持ち込んだのではないか?”と言うものですが、現在調査中です。三番目には、「10年前と患者数は変わらないのに、医師が最近よく報告をあげるようになっただけでは?」と考える人もいます。



Q. 外国人観光客の持ち込み?世界の梅毒事情はどうなっていますか?

A. 世界的には、1940年ペニシリンが開発されて以降、急激に減少しました。1980年台に一時増加したものの、90年台には再び減少しました。
しかし、21世紀に入ると再び増加し始め現在に至っています。 近年ではラテンアメリカ、カリブ諸島、アフリカ、アジア地域はそれぞれ年間300~400万人の新規患者が報告されています。 北米でも10万人、西ヨーロッパでも10数万人、そして中国では100万人超と言われています。今の日本おいては、外国からに持ち込まれる(あるいは持ち帰る)可能性は十分あるようです。



Q. 流行している梅毒を減らすにはどうしたらよいのでしょうか?

A. 「梅毒とその予防法の啓発に努めること」マスコミや学校、成人式の折などあらゆる機会に啓発することが大切です。二番目には「感染者は性行為を控え、早く治療すること」です。風俗店が自発的な感染予防の取り組むことも大切でしょう。



Q. 具体的な予防法とは?

A. 風俗店を利用する場合や、よく知らない人と性行為をする場合は、コンドームを使用することがまず最も大切です。 ただ、これだけで100%完全に防げるわけでもありません。コンドームを付けてない所には感染する可能性があります。なお、性行為の後に陰部を洗っても効果はありません。



Q. キッスでうつりますか?手で触っただけとか、食器とかでは?

A. 梅毒菌を含む体液(血液や膣分泌液、精液など)が、粘膜や“傷ついた皮膚”に触れると感染が成立します。よって、仮に舌に梅毒による病変があれば、キッス(唇は柔らかくきず付きやすい)にて感染する可能性はあります。 用心は必要ですが、かといって、 過剰に神経となって、”ちょっと触れただけでうつるのでは?“と、考えるのも良くはありません。 実際、食器、唾や尿、母乳、輸血などによる感染例はありません。 梅毒は基本的に“性行為と母子感染でうつる病気”であると捉えることが大切です。



Q. 梅毒にかかることは恥ずかしいことでしょうか?

A. 恥じることではありません。医師アフレート・ブラッシュが警告したように「我々の社会は汚染されている。撲滅しないと大変なことになる」と言うことでしょう。
病院は梅毒をいち早く治療し、かつ感染を断ち切ることを使命としている所です。 不安になった時は、すぐに病院を信頼し、受診しましょう。



以下に補足の画像を添付します。参考になれば、幸いです。

補足画像1



晩期顕性梅毒・・・近年、見ることはありませんが・・・

補足画像2




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